EagleLand

2025年に読んで良かった本

Published at 2025-12-27

マネジメント[エッセンシャル版]

いわゆるプロジェクトやピープルマネジメントを想像しがちな人も多いが、そういった狭窄的な視野から抜けたそもそも論を問い直す良書。抽象度が高い故に語り口も固めだが、実例を交えながらも言及に無駄がなく、観点を持ち得る人には思考を体系化するヒントが多く詰まっている。マネジメント未経験の状態で読んだ時にどうなるかは不明だが、多層でのマネジメント経験を踏まえて読んだ時に、様々なアナロジーを感じながら同意できる内容だった。恐らく読む人のマネジメントに関する解像度次第で面白さが大きく変わる本。

変化のときこそ、基本を確認しなければならない。ドラッカー経営学の集大成を1冊に凝縮。自らの指針とすべき役割・責任・行動を示し、新しい目的意識と使命感を与える書。

ドラッカーの本は、はじめて読むドラッカーシリーズとしてイノベーターの条件プロフェッショナルの条件チェンジ・リーダーの条件テクノロジストの条件があるが、マネジメント[エッセンシャル版]である程度網羅的に読める。

読書について 他二篇 (岩波文庫)

「読書そのものより、読んだ内容を自分の頭で“再構築”できるかが知の価値を決める」という点に尽きる。他人の思考を追体験するだけでは本質的な理解にはならず、異なる知識同士を結びつけ、自分の文脈で問い直して初めて“自分の知”になる。権威や引用に頼る姿勢は、理解力の放棄にすぎないという指摘も鋭く、普通の語で非凡なことを語るべきだという文体論も同じ文脈にある。読書とは本質的に「他人の頭で考える行為」であり、それを土台に自分の思考を持てるかどうかが、読書体験の真価である。

前記『付録と補遺』の中から『思索』『著作と文体』『読書について』の三篇を収録.「読者とは他人にものを考えてもらうことである.一日を多読に費す勤勉な人間は次第に自分でものを考える力を失ってゆく.」――鋭利な寸言,痛烈なアフォリズムの数々は,山なす出版物に取り囲まれた現代のわれわれにとって驚くほど新鮮である.

「読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである」は、読んで満足している人にとってはインパクトが大きい一文だろう。咀嚼し繋ぎ合わせて辿り着いた思考こそに価値があるという指摘は、知識から知恵への転換に他ならない。

THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告

AIと合成生物学という「汎用技術の新波」が、人類に前例のない繁栄と同じ規模のリスクを同時にもたらす。技術は拡散し安価になり、社会構造や権力バランスを一変させる。悲観を避けて楽観だけを見る「悲観論嫌悪」のほうが危険であり、アルゴリズムバイアスからバイオリスクまでをバラバラに議論している限り、波に飲まれるだけだという重い指摘。AIは人の知的単純労働だけでなく、善悪両方の力を増幅する。だからこそ、撤退ではなく「汎用革命に対する汎用コンセプト=統合的なルールと覚悟」を持てるかどうかが、これから数十年の生存条件である。

AI、ロボット工学、合成生物学、核融合、量子コンピュータ、DNAプリンター、自律型致死兵器、人工ウイルス……。超進化する新世代テクノロジーが組み合わさることで、開発者すら想定していない未曾有の大混乱と大惨事がもたらされる。人類は分水嶺を越えようとしている。だがまだ何も準備ができていない。このまま強力なテクノロジーの「封じ込め」に失敗すれば、現在の国家は崩壊し、世界秩序は大混乱に陥る。私たちは一部の超巨大AI企業と金持ちに牛耳られた激しい格差社会で不安定な生活を強いられるのか。あるいは権威主義体制のディストピア的監視社会で暮らすのか。AlphaGoを開発したDeepMindの共同創業者で、Microsoft AIのCEOを務める著者が著した警告の書。

15 世紀半ばに発明された活版印刷、産業革命をもたらした代表的な技術革新として蒸気機関・電気・インターネットなどは、いずれも時間をかけて非可逆的に受容されてきた。AI は間違いなくその1つであり、その社会を変革するスピードは急速に速まっているだけでなく、一部の巨大 AI 企業が大多数の人間を使うといった社会構造をも変え得る力を持っている。

〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

戦略とは「何をやらないか」を決めることであり、競争とは相手を叩き潰すことではなく、独自の価値を創り続けることである。多くの企業が陥るのは、成功事例をつまみ食いする二股で、短期的には安心感を与えるが、トレードオフを拒否する行為であり、結果として同質化と競争の収斂を招く。価値提案→バリューチェーン→トレードオフ→全体適合→継続性という連鎖で、戦略はスローガンではなく、活動全体に制約を課し、相互に噛み合わせる設計行為である。だからこそ戦略の主体は企業全体ではなく事業であり、競争優位は選択の一貫性から生まれる。

競争優位、バリューチェーン、五つの競争要因(ファイブフォース)、差別化、トレードオフ、適合性(フィット)――企業の持続的な成功に不可欠な競争戦略のアイデアを豊富な事例と最新の理論にもとづいて解説。巻末にはマイケル・ポーターとのQ&Aを収録。近年の講演で頻出する経営者からの質問に教授本人が答える。

いわゆる著名な戦略書として良い戦略、悪い戦略戦略の要諦、少し趣向を変えれば孫子老子などがあるが、ビジネスにおける事業戦略に絞って話せば、このマイケル・ポーターの競争戦略が最も実践的な戦略書かもしれない。

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