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Speed IndexというWebパフォーマンスの指標

Published at 2017-05-29

Web パフォーマンスの文脈で語られてきた DOMContentLoadedload といった、いわゆるロード速度として括られてきた指標は、ユーザー体験とパフォーマンスの相関を俯瞰する上でいまや適切ではない。

DOMContentLoaded は DOM ツリーと CSSOM ツリーを組み合わせたレンダーツリーの準備完了を指し、ひとつの Web クライアントサイドでできる最適化の指標だが、それでも描画状態はレンダーツリーの複雑さやスクリプト処理との兼ね合いに依存してくるので、如何に素早くページが表示されているか ということを正確に表現できない。

load は HTML ドキュメントから参照する画像などのサブリソースのロードが全て完了した状態で、この頃にはページ全体が表示完了している状態に近い。しかし長大なコンテンツでは、ユーザーがページの最下部まで見る保証はなく(むしろ見ないのが大半)、より重要であろうファーストビューの表示が早かったか はわからない。

Speed Index は Google が提唱する、ロード開始からファーストビューが如何に早く表示されるかを表すスコア である。

Speed Indexの考え方

同じコンテンツのページ A とページ B があったとして、どちらもロード開始から 11 秒時点でファーストビューの表示が 100% 完了するものとする。しかしページ A とページ B では経過時間に対するファーストビューの表示状況が異なり、ページ A はロード開始から 1 秒時点で 80% 表示されていて、かたやページ B はロード開始から 1 秒時点で 20% しか表示されていない。この時、ページ A の方がユーザー体験が良いのは明らかである。

経過時間に応じた描画進捗の差

この時ページ A とページ B の差は、 ロード開始からの経過時間に対する描画進捗 である。両ページの描画進捗を、X 軸に経過時間、Y 軸に描画進捗にとるグラフにすると次のようになる。

このグラフによって、ファーストビューがロード開始から如何に早く多く描画されているかを表現できている。この色付き部分を比較しても良いが、仮に描画が 99% でずっと止まるようなケースでは色付き部分の面積が大きくなり続けてしまう。なので、経過時間に対して描画されていない量(面積)を計算することで、スコアを有限にできる。これが Speed Index である。

スコアの算出計算式などの詳細は、以下の公式ドキュメントを参照してほしい。

Speed Indexの算出手段

Speed Index の算出方法はいくつかある。どれも先の考え方に沿っているものの、基づくデータが様々なので、異なるツールで割り出された Speed Index 同士を比較はできないだろう。

WebPageTest.org

WebPageTest は Google が開発する Web ページのパフォーマンスを解析するツールである。先のドキュメントからもわかるが、SpeedIndex のアイデア元でありオリジナルの実装。オープンソースなので、AWS 上にデプロイして自身でホストなども可能である。

チェックしたい URL を入力しテストを実行すると、AWS のインスタンスのテストエージェント(Chrome や Firefox など)がその URL に実際にアクセスして、その情報を元に様々な解析を行うという仕組み。インスタンスの場所やネットワークの速度を指定してテスト実行するので、実際のユーザー体験を想定したテストというよりは Web アプリケーションのボトルネックを検出するためのツールとしての意味合いが強い。この WebPageTest をラップして定期実行などの機能を追加することで、より Synthetic Monitoring に近づけているのが SpeedCurve にあたる。

WebPageTest ではテストエージェントによるアクセス時に、その Web ページをビデオキャプチャして、フレームから描画進捗を割り出し、Speed Index を算出している。

paulirish/speedline

speedline は DevTools のフレームキャプチャ付きのタイムラインデータを利用し、描画進捗は SSIM によって算出している。

speedlineのデモ

コマンドラインから使えるし見た目もわかりやすくて良いが、DevTools のデータを必要とするので実行環境のネットワークやマシンスペックにテスト結果が依存する。テスト環境を固定化できれば Synthetic Monitoring にも使えそうだが、手元でのデバッグ用と割り切るほうが良さそう。

WPO-Foundation/RUM-SpeedIndex

RUM-SpeedIndex は、ブラウザが Web ページにアクセスしたときのリソースのロード状況を取得する Resource Timing API を用いて Speed Index を計算している。WebPageTest の作者である Patrick Meenan 謹製のツールで、ブラウザスクリプトで完結するので実際のユーザー環境での Speed Index を算出可能な、今のところ最も現実的な手段である(名前の通り Real User Monitoring にフォーカスしている)。

この RUM Speed Index の値、つまりリアルユーザーが体験しているパフォーマンスのスコアを、例えばプロジェクトで使用している Google Analytics に送信すれば、パフォーマンスと離脱率や Page Views/Session 、そしてプロジェクトの重要 KPI との相関を可視化できる。WebPageTest や SpeedCurve のような Synthetic Monitoring と併用していくと良さそうだ。

余談

この手の計算された値は、標準化されるイメージが沸かないが、気持ちとして…。

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